一生に一度の恋に身を焦がし

泡になって消えてしまった人魚姫は

幸せだったのだろうか?

 

人魚姫〜side.She

 

街を歩いていて、ふと目に飛び込んできた

どこかの画廊のウィンドウに飾られていたそれ

目に鮮やかな蒼

そしてしなやかに泳ぐ人魚

そこだけ海に変わった気がした

CGで作られていたその絵は本当に綺麗だったし

その絵に添えられていた言葉が私を尚更引き込んだ

<楽園の海で 会いましょう>

再びその絵に目をむけて楽園という言葉に納得する

それぐらい綺麗な絵なのだ

もう少し見ていたかったが、待ち合わせの時間に遅れそうなので渋々その場を後にした

そして、その絵は綺麗さとうらはらに私の心に暗い影を落とした

 

 

 

「何かあったのか?」

「へっ?」

待ち合わせ場所にすでに来ていた彼の元に駆け寄った瞬間、そんなことを言われ間の抜けた声を出してしまった。

「私、どこかおかしい?」

彼の異常なまでの感の良さに私は内心ドキリとした

「様子が変だ」

「普段と変わらないと思うんだけど・・・・」

しばらくじっと私を見ていたが、私があくまでしらを切るのであきらめたように小さく溜め息をついた。

こうなっては私が自分から話し出すの待つしかないことを彼は承知していた。

「あんまり自分の中にため込むなよ?何のために俺がいる」

子供にするようにポンッと頭に手を置かれた

けれどこの気持ちは決して彼に知られてはいけない、これ以上、彼の優しさに甘えてはいけないのだ

思わず俯いてしまった私に

「どこに行きたい?久々のデートだ、我が儘聞いてやるぞ」

明るくそう問いかける彼になんとか作り笑いを返し、私も明るく言い返した

「私のお気に入りのショップがバーゲンしてるの」

「ああ、お前が気に入っていつも着てるブランドか」

「そう、だからまずそこから行っていい?」

「喜んでお供させていただきますよ。お姫様」

「よろしい!」

笑いながら道をゆく私達はどこから見ても幸せなカップルに見えるだろう

だが、本当ならあってはいけないことなのだ

薄々気付いてはいる

彼は隠しているつもりかもしれないが、隠し通せるものではない

この人はこんな世界にいる人ではないのだ

ふとした瞬間に見せる眼差しの強さ、決断の早さ、絶対の自信

そして何をしていても人を魅了してしまうカリスマ性

この人は生まれながらにして人の上に立つべき人間なのだ

私が一生に一度足を踏み入れるかどうかという立派な店に、この人は自然と入っていける

立ち居振る舞いも洗練され全く違和感なくそういう雰囲気にいれる人なのだ

まあ、スーパーで売っている食料品の値段に詳しいのには驚いたけど

私達はきっと出会ってはいけなかったのだ

交差するはずのない道が交差して

私が差しのべてはいけなかった手を差しのべてしまい

彼がとってはいけなかった手をとってしまった

けれど

本来交わってはいけないものだから

二人の未来に待ち受けるものは

きっと

別れしかない

この手を離す瞬間がきっとやってくる

こんなにも違う世界で生きてきた二人が出会ってしまっても

後に残る想いは

たぶん、後悔だけ

 

 

 

叶わない想いを引きずって生きるより

すべてを忘れて消えてしまったほうが幸せなのかもしれない

たけど決して忘れたくない想いもある

そして

私はその時、どうするのだろう

人魚姫のように泡になって消えることを望むのだろうか

それとも

想いを引きずったまま生きていくのだろうか

私は

どちらを

選択するのだろう

 

 

 

決断の時はゆっくりと近づいている気がした

 

 

 

 

 

言い訳

まず謝ります!すいません。

パラレル本編はあくまでラブコメで突き進む予定ですが・・

変わりに番外がえらく暗い展開になりつつあります

今回は二人が別れる前の幸せだった頃の話です。とはいえヒロインさんかなり思考がマイナスですが

この後、二人は別れて、再び出会うことになります。再び出会ってからの話が本編です。

二人の出会いは本編でおいおい明かしていく予定です。

ちなみにこの話、「side She」となっておりますので当然「side He」もあります。

文法的に合っているのか分かりませんが、よしとして下さいませ。

素材及び文章中で使用している一文はAtelier Littel Eden様のものです




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