一生に一度の恋に破れ

泡になって消えた人魚姫は

幸せだったのだろうか?

 

人魚姫〜side.He

 

引きちぎる勢いでネクタイを緩めながら、俺はホテルの部屋に戻った

仕事柄仕方ないとはいえ

愛想笑いを振りまき

当たり障りのない話題を口にしながら

媚びてくる人間の相手をするのは

うんざりする

最低限度、役目を果たしたと認識したところで

部下達に全てを任せ

あからさまに俺に誘いをかけてくる女達に

侮蔑の視線を返し

俺は早々に部屋に戻った

こういう日はすぐにでも彼女の元に帰りたいのだが

いかんせんここは沖縄だったりする

時刻的にすでに帰れる交通手段はない

いや、帰ろうと思えば帰れる手段を講じることが出来なくもないのだが

そんなことをして帰っても彼女はおそらく怒りまくって俺を部屋から叩き出すだろう

彼女のことを考え、少しだけ苛立ちが治まったことに気付き苦笑する

俺の思考は彼女を中心に回るように作りかえられたらしい

独り寝の寂しい夜を過ごすため、とりあえず俺はシャワーを浴びることにした

 

 

シャワーを浴び、すっきりしたところで俺は冷蔵庫からビールを取り出し、一気に喉に流しこんだ

気分が落ち着いたところでようやく、窓のむこうの風景が素晴らしいことに気付く

バカ高い料金を請求するホテルなだけあって

部屋の間取りもいいし、置いてある調度類も良い物だ

そしてなによりスイートのこの部屋から眺める外の景色は見事なものがあった

最低限度に落とした室内照明の中

今にも降ってきそうな星空に、さすがの俺も感嘆した

彼女がいたならきっと声を上げて喜んだことだろう

俺はその星空を肴に酒肴を楽しむことにした

グラスに氷を入れ、ウイスキーを瓶ごと持って窓辺に腰掛けた

ウイスキーの瓶を置こうとしてそれが目に止まった

窓辺の邪魔にならない所に

月と星の光を反射し

キラキラと輝く人魚の像

中々憎い演出をするな、と思い

俺は「乾杯」とその人魚にグラスを合わせた

人魚姫がモチーフなのだろうか?などと考えているとふと彼女の言葉がよみがえる

「人魚姫って悲恋なんじゃないの?」

そう言えばそんなこと言ってな

確か、レンタルビデオ屋でディズニーの人魚姫が偶然目に入った時だったか

「さあな、結局おとぎ話だろう?どういう結末にするかはその本人次第だろうが」

「むう・・そうなんだけど」

「なんだ?人魚姫嫌いなのか?」

「今はそうでもないかな?」

「今は?昔は嫌いだったのか?」

「だって、ハッピーエンドで終わらないのよ?小さいころは嫌いだったな〜」

「大人になって変わったか?」

「うん、今はね。今はちょっとだけ人魚姫の気持ちが分からなくもないから」

そう言ってどこか悲しげに微笑んでいた

きっと彼女は俺の正体に気付き始めてる

このまま隠し通せるようなものじゃないことは

誰よりも俺自身がよく分かっている

もう少しだけ待っていて欲しい

俺が彼女を迎え入れるのに、何の憂いもなくなるまで

あと少しなのだ

たぶん

出会わなくても生きていけた

出会わないほうがよかったのかもしれない

けれど

彼女は手を差しのべ

俺は彼女の手をとってしまった

もうその手を離すことはできない

おそらく

彼女は別れを覚悟している

俺に負担をかける前に消えようと

この想いに区切りをつけようとしている

そんなことは絶対にさせない

手に入れた青い鳥を手放してやれるほど

俺はできた人間じゃない

 

 

 

人魚姫のように泡になって消えるというなら

俺も共に行こう

彼女のいない世界など

俺にはなんの意味も持たないのだから

海の泡となったなら

この想いも消えるのだろうか

 

 

 

 

 

 

言い訳

やっぱり番外編は思考がマイナスになってしまいます・・・

こんだけ強く想っているにも関わらず別れるんですから、不思議ですね〜

って別れさせたのは私なんですが・・・・

私の中で尚隆さんは思いっきり黒い人間です。

まあ、立場が立場なんでそうなってしまったんですが・・

彼が人間らしい感情を表に出せるようになったのはヒロインさんがいたからです。

別れた後の彼はきっと凄かったでしょうね〜

何がって、力も権力も財力もある男が荒れてごらんなさいなすごいことになりますぜ・・・・

一番の迷惑をこうむったのはきっと朱衡達でしょうね。





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