情けないぐらいに一人の人間に翻弄されている

自分が今どこに立っているのかすらわからなくなるぐらいに

幼い子供のように泣きじゃくれば

誰か迎えにきてくれるのだろうか




とりあえず大団円な日曜日




事態の急展開なんてこの2週間に起こりすぎてもはや驚く気力すらない

とりあえず今の私に出来ることをしよう

「ふざけてんじゃないわよ!!!人をなんだと思ってんのよ!!!」

久々に大声だして叫んでみた

泣きそうになったけど、涙はでない

泣けないんじゃなくて、泣かない

あの人のために泣くなんてもう二度とゴメンだもの

これは私の最終ライン

最後の、なけなしの私のプライド

あの人のために再び涙したら

もう、私には何も残らないから

あの人の腕に飛び込むしかなくなってしまうから

そうして彼女たちが淹れてくれたすっかり冷めてしまったお茶を口にして

少しだけ思考が前に進むようになった

情けないことに私は2年前から全然前に進んでいないのだ

あの日、あの人がいなくなった時から

私はその場に留まったままだ

言い換えればそれは、いまだにあの人が好きだということ

そして、あの人が私の前からいなくなることを心のどこかでわかっているということ

2年前のあの時もわかっていた、覚悟していた

あの人が私の前から消えてしまうことも

ただ、その消え方があまりにも完璧すぎた

私の思い出も何もかもを消し去った

それは、覚悟していたはずの私にもキツイものだった

それぐらいあの人は完璧に自分の痕跡を消した

彼女たちの口から語られた真実で

それがあの人の望んだことではなかったということを知った

けれど、それだって本当がどうか私には知りようがない

そして再びそうならないという確証もない


そう

私は確証が欲しいのだ

再びあの人の腕の中に飛び込んで

再びあのような別れを体験しなくてすむような

確固とした何かが

「笑えないわ・・・・」

そこまで考えて凹んだ

結局のところ私に中に、あの人から離れる、あの人を忘れるという選択肢が出てこないのだ

すわり心地の良いソファにクッションを抱え込んで丸くなる

どうせ明日になったら尚隆に会わなければならない

その時、どうなるかなんて私自身にもわからない

そして私はこのところ定番となってしまった現実逃避の手段として夢の世界へと逃げた







誰かが私の髪を梳いている

優しくゆっくりと

ああ、思い出したこれ尚隆だわ

あの人、なぜだか私の髪が好きだったのよね

昔、一緒に眠るといつも私の髪をいじっていた

優しい声も同じ

そして降ってくる優しいキスも

いつも、いつもそれに守られるようにして眠りについた

そして目覚めた

すべては2年前のわずか3週間の間の出来事

「どうすれば、お前は再び俺の元に戻る?」

変なの、どうしてあなたがそんなこと言うの?これは夢なのでしょう?

だって尚隆は明日までこないのだもの

夢でもあなたはそんなことを言うのね、私の強迫観念からかしら?

「お前を俺の元に留めるために、とりあえずやれることをする。お前は怒るだろうがな」

なあに?あなた何をするつもりなの?私はどこにも行かないわよ?

「俺は恐いんだよ。あの時みたいにお前が俺の前から消えてしまうことがな。お前は俺から離れないという確証が欲しいんだ。そのためならどれだけの人間を不幸にしようと、どれだけ恨まれようとかまわない」

おかしなこというのね?あの時、私の前から消えたのはあなたのほうなのに・・・

夢の中で聞く尚隆の声はあの頃と同じだった







「っつ!!ウソ・・・・」

目が覚めればそこはお伽の国ではなく

ほぼ軟禁されているに近いホテルのスイートルームベッドの上

私の記憶が正しければ、私はソファで寝てしまったはず

それなのになんで私は今現在ベッドの上にいるのでしょうか?

答えは簡単、夢だと思っていたことが夢ではなく尚隆が来たということだ

ええ、まあ日付が変われば明日にはなるわよね・・・・

きっとあの人のことだから律儀に深夜12時になるまで待っていたのでしょうけど

部屋に入れば私が寝ていたというところかしら

けれど、目が覚めた時、私は再び一人だった

働かない頭を叱咤して、なんとか夢の中の会話を手繰り寄せる

あの人、なんだか恐い台詞を吐いていなかったかしら・・・・・

まあいいわ、あの人がいないのならばやりやすいもの!!

「問題は服よね・・」

この格好で外をうろつくわけにはいかない、確実に通報されるだろうし、私だって前科ものにはなりたくない・・・とはいえ私が着てきた服は尚隆の手によってただの布キレになってしまったし、それだって綺麗に片付けられている

「さて、どうしたものかな」

「なにか悩み事?」

声に驚いて顔をあげれば僅かに開けたドアの間からさん達が顔を覗かせていた

「ええ〜と着るものがないなぁ〜と思って」

素直に口にしたらさんとさんが待ってましたとばかりに両手に山のように荷物を抱えて入ってきた

「どういったものが好きなのかわからなくてとりあえず手当たり次第に買ってきたの、気に入ったものがあればいいんだけど」

いや・・・なんというか・・・これ全部ですか・・・・しかも全部ブランドものじゃございませんか・・・

「気に入らない?」

さんがすまなそうな顔をするので慌てて首を振る

この量・・・いったいくらぐらいするんだろうか・・・

もそもそと服の山もあさり、一つの服をみつけた

尚隆が最後に私にプレゼントしてくれたのと同じ白地に黒の模様のワンピースを見つけ、自然と手が伸びた

知らなかったわ、これけっこう有名なブランドのものだったんだ・・・

「気に入った?」

さんにそういわれて思わず頷いた

今はもう私の手元にはないけれど、あの人が好きだった服

「あの・・・・お願いがあるんですけど」

「ん?」

三人は一斉に振り向いた

私は小さく深呼吸して三人にお願いをした







あの人が買ってくれたのと同じ服をきて、あの人がやってくるの待つ

あの頃と同じことなのに

あの頃とは決定的に違うものがある

それは私の気持ち

じっとしていられなくて大きな窓に近寄る

さすがにスイートなだけあってここからの夜景は素晴らしいものが

「早くこないとホントに帰るわよ」

「それは困る」

小さく呟いた言葉に返事があり驚いて振り返ろうとして・・・・出来なかった

痛いくらいにきつくきつく抱きしめられたから

・・・・」

「尚隆・・・・痛い・・・・」

私がようやく紡いだ言葉に慌てて尚隆が腕の力を緩めてくれた

「すまん!平気か」

「ん、大丈夫だから」

ああ、なんだか今初めてあなたの顔をちゃんと見た気がするわ

そっと尚隆の頬に手を伸ばす

「少し痩せた?」

「今更だな」

ホントに今更だわね、この2週間あれだけ大騒ぎしながらあなたは近くにいたのに

私は見ていなかった

・・・・俺は」

「言いたいことなら私もあるの」

何かを言いかけた尚隆を制する

「だけど、そうねあなたの言い分から聞いてあげるわ」

下から睨みつけるようにことさら偉そうに言ってみせる

これぐらいで引き下がるようならそこまでよ!!私の戦いはこれから始まるんですもの!!

尚隆は私の背中に手を回したまま、真っ直ぐに私を見て

「お前が俺を許せないのも怒っているのもわかる・・・だが俺はお前をもう二度と離したくない」

「それで?」

気持ちを悟られないよう腕組みして、少しだけ意地悪そうな笑みを浮かべてみせる

尚隆は一度目をつぶると

「好きだ、好きなんだ。お前を愛している、お前を離したくない。一生俺の傍にいてくれないか?」

なんて威力をもつ言葉だろう、思わず顔を覆って下を向いてしまった

小刻みに肩が震えるのが自分でもわかる

哀しいんじゃない、その正反対

嬉しすぎて自然と涙が出てきた

ああ、もう折角私も負けないようにって頑張ってきたのに

涙が止まらない私を尚隆は今度は優しく抱きしめてくれた

「私、何にも持ってないわよ」

尚隆の腕の中で少しだけ気持ちは落ち着いて、言葉を発することが出来るようになった

?」

「あの部屋はもうないんだもの。何一つ残っていないわ」

そう私があの3人にお願いしたことは一つ

私の意志に反して無理やり引越しさせられた、私と尚隆を完全に別離させるために用意された部屋

そこにあるすべてのものを処分してくれるように頼んだ

何も残らなくていい、残さなくていい

これは私なりのけじめ

尚隆が訝しげな表情をする

・・・それはどういう意味だ」

そう、私は決めていた

この人が言い出す前にすでに

すべてを捨てて、帰れる場所さえもなくして、何も持たずに

この人の腕の中に帰ろうと

私のなけなしのプライドなんてどうでもいいわ、しょうがないじゃない私はまだこんなにもこの人が好きなんだもの、ダメだったらその時はそれまでよ!!

「少しは察しなさい!私の帰る場所はもうあなたのところしかないのよ」

尚隆は信じられないというような顔をして、それから本当に久しぶりに笑った

「お前は最高にいい女だよ」

尚隆は再び私を強く抱きしめた。その強さに心地よさに私はやっと全身の力を抜くことができた

そんな私の耳元で彼が小さく呟く

「それで、俺のプロポーズの返事は?」

「あら、あれじゃ不満?」

「できれば言葉にして欲しいんだが」

この人には珍しい弱気な声になんだかおかしくなってきた

「この場合、はい。でいいのかしらね?」

「ああ、それでじゅうぶんだ」









言い訳

終わった〜なんとかここまでこぎつけることができました。ホントはもっと書きたいんですが、そうすると膨大な量になって終わらん!ということになりそうなので一応区切りってことで。
読んでくださってありがとうございます!!しかも人称がコロコロ変わるので読みにくかったでしょうに・・・・精進します!!

しかし、なんでプロポーズしてんだ!!尚隆!!そんな予定はなかったぞ!

ってか私初めて尚隆にプロポーズさせたかもしれない・・・・

詳細をまーったく語っておりませんが、その辺は番外編でおいおいと語っていこうかと。

目指せラブコメ!で始めたんですが・・・ラブコメになってない気がする・・・

2006/09/20




 

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