人には人それぞれ限界というものがあります

当然のごとく人によってその限界点は違うものでありますが

人間やろうと思えばかなり無茶もできるんですね

ただし、限界超えた後の人間ってどうすると思いますか?

笑うしかないんです・・・・・



ひねくれた王子に見初められた姫君の苦悩4



朱衡に拉致・・・いやいや強制連行(同じような気がするけど)されてはどうしたかと言いますと

働きました

そりゃあもうガンガン働きましたよ

コピーから書類の作成、果ては通訳までこなしましたさ

おかげでいったいなんのためにここにやって来た、もとい連れてこられたのか忘れるぐらいに疲れ果てておりましたが

朱衡のすべての仕事が一段落ついたのは日付変更線をこえた午前1時をまわった時だった

「お疲れ様でした。今日の分はめどがついたんで終わりにしましょう」

相変わらず読めない笑顔をみせる朱衡には返す言葉もなかった

「しゅ朱衡さん・・・っていつもこんな時間まで働いているんですか?」

申し訳ないとは思いつつ、革張りの豪華なソファに体を投げ出すようにして首だけ朱衡のほうに向けて問えば

「今は楽なほうですよ」

にっこりとことさら深い笑みを見せられは絶句するしかなかった

あっは!私ってこれから部屋に戻ってレポートやるのかしら?それは無理ってもんね。

自分の中でそう結論づけて知らず知らずのうちに眉間に皴をよせていたを楽しげに眺めていた朱衡だがやおら立ち上がると

「時間があるのならこれから私の部屋まで来ませんか?軽く食べられるものなら用意できますよ」

疲労がピークに達していたのとあまりにも自然な誘い方だったので深く考えもせずには頷いていた

「では参りましょうか」

疲れ果ててヨロヨロのをこれまた引きずるように、しかしどこか楽しげな表情を浮かべて朱衡は会社を後にした





連れてこられたのは有名ホテルの一室で、しかもおそらく最上級クラスの部屋

「朱衡さんってホテル暮らしだったんですね」

あまりの場違いな空間に出てきた台詞はそれで

「私、一人しかいませんからね。面倒事がなくて楽なんです」

身の置き所がなくてあたふたしているをソファに落ち着かせると、ルームサービスを頼んだ

「あの!私やっぱり帰ります」

「ルームサービスを頼んでしまいましたから、帰るのならその後ではいけませんか?」

疑問系なんだけど拒否できない強さを感じ取ってはしぶしぶ頷いた

朱衡はそれを見ると満足そうに頷いて、着替えてきますね、と言って部屋を出て行った

朱衡の姿が視界から消えるとは盛大な溜息をついてソファにズルズルと崩れ落ちた

なんでついてきたんだろう?私って馬鹿?ええ〜馬鹿だわ、そうね馬鹿だわ・・・・

自問自答して果てしなく落ち込む

いまからでも遅くない!やっぱ帰ろう!!

そう決断して勢いよくソファから立ち上がれば

「まさか、帰ろうなんて考えてませんよね?」

タイミングがいいのか悪いのか着替えを終えた朱衡がドアを開けたところだった

「考えてません!考えてません!!」

背後から漂ってくる雰囲気には速攻で己の決意を否定した

「それはよかったです」

柔らかな笑みと初めてみる朱衡のラフな格好に不覚にもは見惚れてしまった

「私の顔に何か付いてますか?」

の正面に移動しながら朱衡が面白そうに尋ねる

「あっ!いや、その・・・そういう顔も出来るんだなぁと思って・・・・」

のその言葉に朱衡の動きが一瞬止まった

「そういう顔とは?」

「えーと、あのですね、今朝方大学で教授と話してた時の嘘くさい笑顔・・・・」

そこまで言ってはやばっと口をつぐんだ、目の前の朱衡から笑みが消えたのだ

怒らせた?怒らせたよね?ってゆーか絶対怒ってるよ!!雰囲気がやばくなってる!!

を凝視したまま動かない朱衡に耐え切れなくなったが口を開こうとしたとき、天の救いのようにルームサービスがやって来た。

それがきっかけになったのかどうか謎だが、朱衡はまるでなにもなかったかのようにに接し始めたので、も先ほどのやりとりはスパッと忘れて朱衡に接した。というか忘れないと身の危険を感じたのである。

食後にコーヒーでも淹れましょうか?と立ち上がりかけた朱衡を、がそれぐらいは自分がやります!と勢いだけで押しとどめ、見るからに高そうなコーヒーカップなどにおっかなびっくりしながらなんとかコーヒーを淹れて、朱衡の前に差し出せば

「ありがとうございます」

笑顔つきの丁寧な礼には不覚にも顔に血が上るのを感じた

卑怯だわ・・・この男はやることなすこと全部・・・なんであんな顔見せるのよ・・・

が自分で淹れたコーヒーに手もつけずに必死に自分の気持ちと格闘しているとき

目の前の男はそりゃあもう満足そうにコーヒーを口に運び、一息いれると

「明日は休みにしておきましたので、部屋から荷物を運び込んでおいて下さい」

な〜んてことをサラッと言い出した

「はい?」

思考の泥沼から這い上がりかけたにはその台詞を理解するほどの余裕はなく、聞き返せば、あの胡散臭い笑顔を向けられ

「明日、一日でこの部屋に引っ越してきてください」

「誰がですか?」

「あなたです」

数秒の沈黙の後、は勢いよく立ち上がりながら

「なっななな何でですかっ!!」

「どもってますよ」

「そんなことはどーでもいいんです!!なんで私がここに引っ越さなきゃいけないんですか!!!」

当然といえば当然な疑問をは朱衡にぶつけた、ぶつけられたほうはと言えばまってましたとばかりに笑みを深くして

「レポート、仕上げたくないんですか?」

「それとこれとどーゆー関係があるんですかっ!!」

「私もそうそう暇な立場の人間じゃないので、あなたのために割く時間もおしいんです」

そりゃそーだろう今日、いや昨日か、の仕事量だって半端なもんじゃなかった

「ですが教授に頼まれましたので、あなたのレポートに協力はしなければなりません」

嫌なら最初っから断ればいいだろに・・・

「あのレポートに足りないことは私について仕事の補佐をしてくれれば十分過ぎるほど学べます」

同じような台詞を拉致られた車の中で聞いたようーな気がするわ

「私の仕事の補佐というからには時間的にかなり不規則になるんです」

朱衡はやおら立ち上がると何を思ったかの頬にスッと指先を滑らせて

「こんな可愛らしいお嬢さんを朝帰りさせるのは忍びないんですよ」

次の瞬間、脱兎のごとくがその指先から逃れたのは言うまでもない

「べべべべ別に私は朝帰りでも全然、一向に構わないです!!!」

壁に張り付くようにして、近づくなオーラを発しているを楽しそうに眺めながら

「あなたは良くても、周りの方々が不穏な噂を立ててくださいますよ?」

そうなると援助のほうもどうなるかわかったものではないですね?と説明されては押し黙った

「さいわい部屋数だけはありますから、なんの不都合もありません」

ちょっと待て!なにがさいわいなんだ!なにが!!

「まさか、嫌とは言いませんよね?」

言えるもんなら言いたいです・・・・

朱衡は再びゆっくりとに近づいて

「大丈夫です。レポートは完璧に仕上がるよう約束しましょう」

噛んで言い含めるようにゆっくりと

「ですから、安心して働いてください」

「あんたのその言葉と笑顔が一番安心できないっつーの!!!」

敬語も丁寧語もすっかりさっぱり忘れては叫んだ

「ひどい言われようですね。結構、傷つきましたよ」

傷ついたというよりむしろ楽しんでいるといった表情をみせる朱衡にはいまさらながらにこの男と知り合いになったことを心の底から力いっぱい後悔した

朱衡は笑顔のままを見据えて

「今日はもう遅いですから泊まっていきませんか?」

「遠慮します」

な〜にトチ狂ったこと言ってるんだ・・・この男は!!

「そうですか?ですがすでに終電はありませんよ?」

その台詞にの視線は時計を探し、その時刻を認識するとその場に崩れ落ちそうになった

「どうしますか?」

タクシー使って帰ろうかしら?ああ〜でも駄目だわ、私の奨学金はすでに打ち切られてるだろーから無駄遣いは絶対にできない、でもこの状況に甘んじるよりかは確実に身の安全は保障できるだろう

「タクシーで・・・・」

がタクシーで帰りますと言いかけたとき、朱衡が一枚のキャッシュカードのようなものを取り出した

「これ何だと思いますか?」

朱衡の行動もそのカードも意味不明でが首を傾げれば

「フロアとエレベーターホールの間にある扉の鍵です」

そういえばと思い返せばセキュリティの問題なのだろうが、このホテルには部屋の入り口だけでなくエレベーターホールとフロアのところにも強化ガラスで仕切られた扉があった

つまりそれがなければ廊下に出てもエレベーターにまで辿り着けないわけで

「それ、下さいませんか?」

がにっこりと笑みを浮かべながら手を差し出せば

「それは出来ませんね」

とこちらも負けていない笑顔でそう応えた

「明日になれば部屋までお送りしますよ。ですから今日は大人しく、泊まっていって下さい」

「もし嫌だと言ったら?」

のその言葉に朱衡はほんのわずか眉をしかめたが

「レポート、忘れたわけじゃありませんよね?」

結局のところ、に勝ち目はまるっきりないのである







言い訳

なんかラブコメっぽくなってないですか?

朱衡のやってることってなんか犯罪っぽくないですか?大丈夫か?

教訓:のこのこ男の部屋についていっちゃいけません!




 

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