己の認識の甘さを痛感する
泣き言を言うつもりはないけど
愚痴ぐらいは言わせてもらっても許されるんじゃないの?
ひねくれた王子に見初められた姫君の苦悩5
「これを至急、日本語に訳しておいて下さい。それとそちらの書類はコピーが済んだら私の机に」「わかりました」
あれからはや三週間たちました。
皆様お元気でしたでしょうか?
脅迫?いやいや、ギブアンドテイクというわけで今日も今日とては朱衡の元で必死に働いております
朱衡の補佐という名目ですがようは雑用係りです
朱衡にもちゃんと秘書はいます立派なのがね
ただ、彼の場合その秘書が
長く居つかないんです・・・・
おかげで現在、は朱衡の秘書として周りに認識されつつあります
「朱衡さん・・・いい加減、秘書の方に対する対応を変えたほうが良いんじゃないですか?」
さすがに己にかかってくる仕事量の増加にが文句を言い出した
「私とてべつにクビにするつもりはないんですよ。ただあまりにも使えないだけです」
長くて三日、短いと僅か二時間あまりで人事課から派遣されてきた美人秘書の方々は去っていかれます。
泣きながら部屋を飛び出していく彼女達を、ああ〜またやってる、と横目でみながらは己に来るであろう仕事に溜息をつく
「朱衡さん、人に完璧を求めすぎですよ」
ぶつぶつと文句をいいながらは指示された仕事をこなしていく
私ってこのまま大学クビになってもいつでも秘書として働けるわ
そんなを見つめながら朱衡はどこか考えるそぶりをみせ
「そうですね、確かにそれはあるかもしれませんね」
珍しくもの意見に朱衡が賛成の意を表したのでは手にしていた書類を取り落としそうになった
なんか悪いもんでも食べたのか?ああ、それだったら私もそうね、同じもの食べてるんだから・・・・
「明日から来なくていいですよ」
「はっ?」
話の流れが掴めなくては間の抜けた声をあげた
「レポートの提出まであと三日しかないでしょう?」
そーいえばそうだった・・・忙しさのあまりに頭の中からすっぽりと抜け落ちていたけど
「そろそろ取り掛からなければ大変なことになるでしょうから」
柔らかなその笑みには思いっきり目をそらした
あの笑顔は絶対!反則だわ!!
「これでレポートが出来なかったら笑い事じゃ済まないですからねえ」
あははと笑いながら言われては手にした書類を思わず投げつけそうになった
却下!も却下!大却下だわ!少しでもいい人だと思った私が馬鹿でした!あの笑みにほだされそうになった私もまだまだね・・・
が気を取り直して、コピーした書類を差し出そうとしたとき、ノックの音が響き朱衡の返事を待たずに一人の男性が室内に入ってきた
「おお?お嬢ちゃん、今日も頑張ってんな」
彼は朱衡に挨拶するより前にに目をとめた
「帷湍さんもお元気そうで」
何かにつけを子供扱いする彼は朱衡と同じこの会社の重役でもある
「珍しいですね、この時間にここにいるなんて」
「嫌味か?」
「いいえ、本音です」
その言葉に帷湍は苦虫を噛み潰したような表情を見せた。朱衡がそう言うのももっともで帷湍はたいてい早朝に会議を招集した後は現場を飛び回って昼間は殆ど会社でその姿を見かけないのである。
「こいつが成笙の所から回ってきたんでな」
差し出された書類に目を通しながら朱衡は小さな笑みを浮かべた
「いよいよですか?」
「そうみたいだな、さすがに我慢の限界だったみたいだ」
「まあ、今までよくもったほうでしょう」
「確かにな。お嬢ちゃんにも教えといたほうがいいんじゃないのか?」
突然、自分に矛先が向いてはへっ?という顔をした
「彼女は明日からここには来ませんよ。それに正式な社員でもありませんしね」
意味深なその言い方に帷湍はおや?という顔をしてみせたが、それ以上何も言わずにさっさと部屋を後にした
一方、は意味もなく落ち込んでいたりする
彼女・・・・ですか。確かに間違った表現の仕方じゃないんですけど、これだけ一緒にいるのに一度も名前を呼んでもらえないのも悲しいもんがあるわね
朱衡はと出会ってから一度として彼女を名前で呼んだことはなかった
は朱衡の名を呼んでいるにも関わらず朱衡は頑なに彼女の名を音にしなかった
会社では朱衡以外の人間と接することが殆どないこともあって<彼女>という形容詞がそのままを指していた
ええ〜い!余計な考えはこのさいすっぱり忘れてしまおう!レポートさせ上手くいけばもう二度と関わることはないんだし、お互い感情にほだされることもなくていいわ
の心の内を知ってか知らずかその日も朱衡は休む間もなく働き続け、当然のごとくも付き合わされたのである
「うにゃあ・・・」
「なかなか素晴らしい眺めですね」
幸せな眠りの淵を漂っていたの意識はドアの方向から飛び込んできた一言によって無残に打ち砕かれた
ガバッと飛び起きたにこの部屋のもう一人の住人は
「朝早く申し訳ありません」
と爽やかな笑顔を見せた
「ななななな何してるんですかっっっ!!!!」
条件反射で飛び起きたものの完全に頭が覚醒しているわけではなく、どもりながら叫べば
「実はこれから出かけなければならなくなったので」
あ〜じゃあ私も付き合わされることになるのか、とがノロノロとベッドから出ようとすると
「起きなくていいですよ。あなたには今日からレポートに集中するようにと言っておいたでしょう?」
ならなんで起こすんだ!!この男は!!
の無言の怒りが分かったのかことさら爽やかそうな笑顔を浮かべて
「二日ほど帰れそうにないのでそれを言っておこうと思いましてね」
あなたのことだから私が帰るまで起きているともりだったでしょう、と言外に言われは沈黙した。その通りである、何だかんだといってもは律儀(?)な体質で無理やりとはいえ一応お世話になっている人間がさっさと先に寝てしまうというのは気が引けてしまい、これまでも朱衡が休むまで半ば強引に起きていたりする。
「昨日のうちに話すつもりが話しそびれてしまいましたのでね」
「だったらメモにでも書いて置いておけばよかったじゃないんでしょーか」
寝起きのあまりよろしくないは不機嫌を隠しもせずに声に出した
「見逃すといけないと思いましてね。それに」
朱衡はじっくりと寝起きでいまだボーっとしているを眺めて
「朝からいいもの見させていただきました」
「っつ!!!こんの変態オヤジっっっ!!!」
は叫びながらはだけていたパジャマを直しつつ枕を投げつけるという荒業をやってのけた
朱衡は枕をなんなくかわして
「では、いってきます」
と笑いながら出て行った。
は肩で荒く息をしながら再びベッドにもぐりこみさっきまでの出来事を夢として片付けるために再び眠りの世界に旅立った
はずだったのであるがなにせあれだけ大声で叫んでいたりするわけだから有難くもなくばっちり目は覚めてしまって仕方なくはノロノロと起き上がると期日が目前にせまったレポートと向き合うことにした
実際問題として朱衡の言っていることは正しかった
は改めて自分のレポートを読み直し、顔から火が出るほど恥ずかしかった。己の独りよがりな考え、そして判断の甘さがよくわかった
別に朱衡に手取り足取り物事を教えられたわけではない、けれどビジネスの最前線で戦っている男のそばにいたのだからそれなりに知識も経験も増えてくる
朱衡の言う「レポートに足りないこと」は確かに学べたのである
ただし、それなりの代償も払っている!とは強く思っている
言い訳
なんだかんだいってラブラブじゃんあんたら・・・
朱衡が彼女の名を呼ばないのはそれなりのワケが〜ってそんな大層なもんじゃないですよ
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