こんなに後悔したことはなかった
悔やんでも悔やみきれない!!
あの人の前で油断した私も馬鹿だったんでしょうね・・・きっと・・・
ひねくれた王子に見初められた姫君の苦悩6
「終わったぁ〜」は自分の将来が思いっきりかかったレポートを何とか仕上げることに成功した
相手側がこれで納得してくれるかどうかは分からないが、今のにとって持てる力全てを注ぎ込んだといっても過言ではないだろう
自分用にとわざわざ用意された机に突っ伏しては白々と夜が明けていくのぼんやりと眺めていた
提出期限は今日。教授に提出すればいいとのことだった。教授の手から援助を申し出てくれた奇特な人の元へ渡されるのだろう
そういえば私って援助してくれる人がどんな人なのかまったく知らないんだわ
今更ながらに自分の無知ぶりには頭を抱えた
なにしろそれどころじゃない日常をつい最近まで送っていたのだから
教授に聞いたら教えてもらえるんだろうけど・・・・あの教授が素直に教えてくれるかどうかもあやしいもんだわ
足長おじさんといったところだろうけど、実際相手が分からないのはヤバイよね
が悶々と考えこんでいると隣の部屋に人の入ってくる音がした
この部屋に入れるのは以外にはあと一人しかいないわけで、考えるまでもないのだが
あれ?帰ってきたのかな?二日間は留守にするって・・・・今日はすでに三日目か・・・
徹夜明けですっかり曜日感覚が狂っている自分に苦笑しながらは立ち上がった
リビングルームとなっている中央の部屋にそーっと顔を出すとさすがに疲労の色を隠せない朱衡がいた
「お帰りなさい」
小声でそう呟くと朱衡は驚いた顔をしてみせた
「こんな時間にどうしたんですか?」
「えーとレポートがたった今終わったところです」
その返事に朱衡はああ、そうでしたねと納得していた
「朱衡さんこそこんな時間に帰ってくるとは思ってませんでした」
「予想以上に仕事が早く終わったのでその足で帰ってきたんです」
作った笑顔ではない微笑を向けられては気恥ずかしさに視線をそらした
「せっかくですからコーヒーでも淹れましょうか?」
「お願いできますか?」
「いいですよ」
カウンターキッチンに向かうの背中に
「夜明けのコーヒーというわけですね」
という意味深な台詞が飛んできて、思わず勢いよく振り返ればひどく楽しそうな表情の朱衡とばっちり視線が合い
「っつ!どーしてそーいう余計なことを言うんですか!!」
「これは失礼。では私は着替えてきますね」
笑いをこらえきれない朱衡の背中を睨み付けながら、はがっくりと肩を落として慣れた手つきでコーヒーを淹れ始めた
う〜んちょっと濃い目に淹れたほうがいいかな?でも胃には優しくないわね
ちょっとの間考えていたが、やはり少し濃い目に淹れて、胃の負担も少々考慮して普段はつけないミルクをつけることにした(この二人はいつもブラックで飲んでます)
それもクリープとかではなく(当然といか無論というかこの部屋にそんなもんはないが)わざわざ牛乳を鍋でほんの少しだけ温めて出すことにした
何故、ホテルの部屋にこんなものが揃っているのかと言えば、ひとえにの苦労の賜物である。
朱衡に働かされていた三週間の間そりゃあもう不規則なんて言葉が可愛く思えてしまうほど滅茶苦茶な時間帯での活動を余儀なくされたのだ
そんなわけで食事を摂るのも普通の店がやっている時間帯には難しい上に、ほっとけば朱衡は寝食を忘れて仕事をする。しかし、それに付き合わされるはたまったもんじゃない、私は普通の人間なんだ〜!!と言いながら食材や調理器具を買い込み、ほとんど使われた形跡のなかったカウンターキッチンを使用済みへと変えたのである。とはいえやはりホテルであるそうそう凄いわけでもなく本当に気持ち程度ではある。
がコーヒーとミルクをテーブルに置くとタイミングよく朱衡が部屋から出てきた
「ありがとうございます。すみませんお手数をかけてしまいましたね」
「そんなことないですよ。私もちょうど飲みたかったところでしたし」
何だか不毛な会話してる気がするんだけど・・・・
「朱衡さん、ちょっと濃い目に淹れたんで、胃にきついかもしれませんからミルク入れてください」
自分のコーヒーを啜りながらそんなことを言えば、今までみたことのない表情をされてしまい、は一瞬自分が何か変なことを言ったのかとあたふたした
「ああ、すみません。何でもないんですよ」
うろたえるを安心させるように柔らかく微笑んで、朱衡はの言う通りにミルクを入れた
一口飲んで、ホッとしたような表情をつくる朱衡には仕事が忙しかったのかな〜などとのほほんと考えていたが
「そういえばレポート終わったんでしたよね?」
「はあ、一応は・・・・」
「見せていただけますか?」
「はい?」
「最初に言いましたよね、完璧に仕上げることを約束しますと」
そーでしたそう言ってましたね・・・・
は渋々レポートを朱衡に提出した。朱衡はコーヒーを飲みながらレポートに目を通した
その静かな時間がにとっては拷問に等しく落ち着かない、かといってウロウロ歩き回るわけにもいかず結局じっと待つしかなかった
「いいでしょう、これだけ充実した内容なら文句のつけようはないと思いますよ」
その一言にはホッとするよりも朱衡に認められたということの嬉しさのほうが大きかった
「ありがとうございます」
手元に戻ったレポートをぎゅっと抱きしめて礼を言うは本当に嬉しそうな、無防備な笑顔を見せた。
すると不意に朱衡が困ったような表情を見せて
「すいません、ちょっと紳士でいられそうにないです」
そう言い置いて、の頬に挟み込むように優しく手を伸ばすと
暗転
は自分に何が起きているのか理解出来ずに硬直していたゆっくりと自分から離れていく朱衡の指先にようやく脳内活動が再開した
ちょっと、待て・・・頭の中を整理しよう。何か・・・今・・・その・・・・
柔らかいものが唇に触れて・・・・それって相手の唇だったりして・・・
つまり、たった今、私は目の前にいる人間と・・・キス・・・したわけで
認識した途端、恥ずかしさが津波のごとく押し寄せてきた
「大丈夫ですか?」
パニック状態に陥って一人でわやわや(?)しているに朱衡は平然と声をかけた
大丈夫ってなにが?何が大丈夫なの?否、むしろ全然大丈夫じゃないわ!!!つーかなんであんたは平然としてるわけ!!だいたい、いっつもいっつも人を振り回しておいて何が大丈夫だっつーのよ!!
「っざけるんじゃないわよっっっっ!!!!」
は思いっきりよく叫びながら朱衡に見事な平手打ちをかまして部屋に逃げ込んだ
何で?どーして私がこんな目にあわなきゃいけないのよ?レポート?ああ、そうねあのレポートさえなかったら。というよりむしろこの大学に、いいえ日本に来なかったらこんなことにはならなくてすんだのに!!!
混乱したままはベッドもぐりこんだ
忘れてしまおう!そうよ、あれは夢なのよ!夢!!!徹夜明けだったから妙な夢みたんだわ!!
そのまま、は徹夜明けの疲労も重なって眠りの世界に引き込まれていった
「そろそろ、起きたほうがいいと思いますよ」控えめなノックとどこか呆れたような声にの意識はゆっくりと浮上した。無意識に枕元の目覚まし時計に手をやる
現在時刻、午後六時を少々まわったところ
「そろそろ、教授の元に行かないと、あの教授のことですから七時には帰られますよ」
一気に意識が覚醒したはベッドから飛び起きた。開かれていないドアから朱衡の声が届く
「準備ができたら降りてきてください。車を用意しておきます」
「ご遠慮させていただきます!!」
反射的にそう口にしていた。しばしの沈黙のあと
「いいですか、あなたが準備を終えて最寄りの地下鉄駅まで20分、大学近くの駅まで10分、そこから大学の教授の部屋まで徒歩で25分。間に合うと思いますか?」
思いませんとも・・・だがしかし、この男に近づくのは身の危険を感じる
「理解できたらさっさと用意して下さい。レポートはテーブルの上に置いてありますから」
そこで初めては何よりも大事なレポートをすっかり忘れていたことに気付いた
ええい!!もうどーにでもなれだわ!!
服を着替え、化粧までしてはレポートを手に部屋を後にした
ロビーには朱衡が待っていて、少々緊張した面持ちのに目を細めた
朱衡は何も言わなかったが、大丈夫だ、という感じに軽くの背中を押して車に向かった。その動作に先ほどまでの緊張をどこ行ったというぐらい落ち着きを取り戻したは置いていかれないように小走りに朱衡の後を追った
勝負はこれからです!!頼んだわよ!私のレポート!!
後書き
朱衡がどんどん手に負えなくなってくる・・・ヒロインさん大変だぁ〜
夜明けのコーヒーがなにを意味するかお知りになりたい方は知ってる方に聞いて下さい(笑)
まあ、今回はチュウだけだったしねって誰に言い訳してるんだろうか・・・
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||