人間の理解能力にも限界はあるでしょう?

自分がまともでいられたのは奇跡に近いんじゃないでしょうか?

我ながら現状認識能力が限界に近いと思うんだけど




ひねくれた王子に見初められた姫君の苦悩7




車内でも朱衡は書類と向き合っていて、のほうに視線すらむけない

もなんとなく気まずくて外ばかりを眺めていた

もう少しで大学に着くという時、突然、書類から目を離さずに朱衡が話しかけてきた

「私は正門で失礼させてもらいますよ。人と待ち合わせをしていますのでね」

その口調にいつもとは違う感じがした。こういうとき女の感は恐ろしいものがある

「女性の方ですか・・・」

朱衡の表情から自分の感が正しいことがわかった

「鋭いですね」

こんなことで感心されても嬉しくもなんともない

「あなたの言うとおり女性です。私にとってとても大切な人なんです」

愛おしむ・・・・そんな表現がぴったりと当てはまるような表情だった

「あは、そんな人がいるのに私なんかと一緒に生活しててよく怒られませんでしたね」

「彼女は・・・私のことをよく理解してくれますから」

気になりますか?と言われは思わずムッとした

「別に、あなたが誰と付き合おうと関係ありませんから。ただの一般論です」

「あなたの感情が幾分か含まれているようですがね」

からかうようなその台詞に反論しかけたが沈黙を通した

今、口を開いたら絶対!絶対!余計なことを口走ってしまう

朱衡は急に静かになったにおや?という顔をしたがそれ以上は何も言わず、大学正門まで重苦しい沈黙が車内を支配した

滑り込むように静かに車が正門に着くとは勢いよく外に出た。

「それじゃ、ありがとうございました」

目を合わせないように注意しながらそう言えば

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。また、後で」

そんな言葉が返ってきてドアは静かにしまった

また、後で?ああ、ホテルに帰ってこいってことか?いっそ彼女のとこにでも泊まればいいのに

朱衡とその相手のことが頭から離れず、は危うく教授の部屋を通りすぎるところだった

「ギリギリですねぇ」

どこかホッとしたような呆れたような声音にはただ視線を足元に落とした

「いつもは余裕をもって何事にも接している君にしては珍しいですね」

言えませんて・・・・キスされてパニック起こしてましたなんて・・・・

「あはは、さすがにこれで自分の運命が決まると思いますとちょっと緊張しまして」

当たり障りのないことを並べてみる

「まあ、間に合ったからよしとしましょう。ちょっと待っていて下さい。連絡しなければならない所がありますから」

「あの、お邪魔でしたら、もう帰りますけど」

「いやいや、君にも関係あることなんでね」

その一言には自分に援助を申し出た人物のことだとピンときた

「教授!あの、その人は!!」

尋ねようとしたその声は教授がすでに受話器を握っていたためにフェードアウトしていった

「ああ、私だが。そうだ、それは構わんが、本当にいいのかね?」

に向けた視線になにがしら含まれたものを感じは緊張した

「ああ、わかったそうしよう。やれやれ、私の立場も考えてくれたまえよ」

溜息つきながらもどこか楽しそうな教授の表情に悪い話ではないことはわかるが話の内容がいまいち読めない

「あの〜教授・・・・」

「はい、これね」

「はい?」

小さな紙片を手渡された、そこにはとある場所への行き方が記されていて

これをどうしろと言うのだ・・・・

「そこに行って下さい。そこでまた何かしらの指示があるでしょうから」

指示?つーか何しに私はそこに行かねばならんのでしょうか?

「君の将来がかかっているんです」

にっこりと、とある人物を思い浮かべそうな笑みにはものすっごく嫌な予感がしたが逃れようはない

「ああ、そうだ一つ言い忘れてました」

部屋を出る寸前に教授が、すまなそうというか哀れみの表情で

「私を恨まないで下さいね」

と意味不明な一言をくれた。首をかしげるを深く考えるな、とばかりに早々に部屋から追い出した

はなんとなく納得しないものを感じながらも渋々、その地図を頼りに行ってみることにした





「ここであってるよね?」

何度も地図にかかれた住所を確認する。いや出来るなら間違いであって欲しいんだけど

「お待ちしておりましたわ。さあ、どうぞ」

ああ〜やっぱ間違いじゃなかったのね。つーか自分ってつくづくこーゆー雰囲気にそぐわないんですけど

逃げ腰のの腕をしっかりと掴んで、先ほど声をかけてくれた綺麗なお姉さんは有無をいわせずに中に引っ張り込んだ

そこは、がおそらく一生に一度足を踏み入れるか入れないかというぐらい格式もお値段も高い、高級ブティック。

おかしい、なんでこんなことになったんでしょうか?私は足長おじさん、というか援助してくれる奇特な方に会いきただけなんですけど

が疑問を口にする暇もなく彼女は人形のように全身を採寸され、クタクタになりながらそれが終われば、休む間もなく彼女の雰囲気にあった服がこれまた山のように出され。

気分はすでに着せ替え人形・・・・モデルさんって大変なんだな〜

すでにこの事態を考える気力すら失っております・・・・

「さあ、これでいいでしょう」

あきらかに店長と思われるマダムという言葉がぴったりな女性が嬉しそうに声を上げた

体の線に沿った黒のワンピース、片側に膝までの深いスリットが入っていて、着る人間を選ぶ服である。

「あの・・・」

「本当によくお似合いですわ」

「いや、これは・・・・」

「これならあの方も満足なさるでしょう」

その言葉にはこれが足長おじさんに会うための準備なのだとようやく理解した

こんな格好しなきゃ会えない人間ってどーゆー階級の人間なんだか・・・少なくとも自分と同じ世界の人間じゃないことは確かだわ・・・

ヘアメイクもばっちりきめられてはどこぞのお嬢様のような格好に仕立て上げられた

そう、まさしく仕立て上げられたのである

「さあ、さあお時間もせまってます。迎えはすでに来ておりますよ」

あれよあれよと追い立てられ、車に乗せられるというか、押し込められた

「あのーどこに行くんでしょうか?」

実直そうな運転手に恐る恐る聞いてみれば、返ってきた答えは某有名ホテル

あは、もうどーにでもなれって感じだわ・・・・もう二度と体験できないことだろうからとりあえず楽しんでおこう

すでには投げやりな気分全開である

計ったかのように正確に車は某有名ホテルの正面玄関にぴったりとつけられ、うやうやしくドアボーイが車のドアを開ける

慣れない格好によたよたしながら車から降りれば

「お待ちしておりました」

とあきらかにプロのホテルマンとわかる人に丁寧に出迎えられた

「すでにあの方はお待ちです」

「はあ・・・」

我ながら情けない返事をしているとは思うがそれしかしようがない・・・あっこの人支配人じゃない、すっごい支配人を使っているわ

案内されるままに大人しくついていけば、そこは最上階のレストランで、しかも個室みたいで

「どうぞ」

言われるままに中に入ればそこには足長おじさんいやいや、奇特な方が・・・・

「ああ、やっぱりそういう格好もよく似合いますね」

いるはずなんだけど・・・・

「大変綺麗ですよ」

今現在、自分の目の前にいるのは

嘘くさい笑顔で周辺を煙に巻くことが得意な

某有名企業の重役でゴーイングマイウェイ人間なくせに

たまに見せる柔らかな笑顔がものすごく印象に残る

敵には絶対まわしたくない人間第一位に輝くであろう

ついさっき大学の正門前で別れた男

「朱衡・・・・さ・・・ん?」

「言いましたよね?また、後でと」

が目前のことを理解できなくて立ちすくんだままなのも当然であろう









後書き

ついに黒幕登場ってとこですが、結構予想はついたのではないでしょうか?

私の中じゃこーゆー奴です、朱衡という男は

ヒロインさんが段々とほだされてます・・・頑張れ!負けるな!!




 

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