張り巡らされていた罠は

想像以上に巧妙かつ繊細で

私はまるで蜘蛛の糸に捕らえられた蝶のようだった

堕ちるしか選択肢がなかったのも確かなんだけど

それを後悔していない私もどうかと思うわ




ひねくれた王子に見初められた姫君の苦悩9




すべてを語り終え、は本日6杯目のビール中ジョッキをあけ

すべてを聞き終えた、は枝豆を手にしたまま固まった

7杯目のジョッキを注文する声ではハッと我に返った

「現状認識まで約3分ってとこかな?なかなか優秀じゃない

枝豆を口にしながら楽しそうにそんなことを言う

「ありがとう・・・・ちなみに他の人はどれくらいで復活したの?」

なんとなく予想はつくが一応尋ねてみる

「朱莉は固まることはなく淡々としていて、彩希は固まったものの約1分で現状認識できたわね」

さすが、の同僚にして親友な彼女達なだけあるわ・・・・

「でもなんで、朱衡さん名前を呼んでくれなかったの?」

手にしたウーロン茶を飲み干しながらが首をかしげながらそんなことを尋ねた

「ああ、それはね」

すぐに運ばれてきたジョッキに口をつけ、に視線をやると

ワクワクという擬音がぴったりの顔をしていたので、面白くなって

「ひ・み・つ」

額をペシっと叩いてそう返す

「ずるーい!!ここまで人に期待させといてそういうこと言う?」

「そっちが勝手に期待したんでしょう?私に責任はないわよ」

むう、と不貞腐れるが面白くて、当分このネタで遊べるかな、などと不吉なことを考えていたりする

「そろそろ、帰ろうか?けっこう遅くなっちゃったわね」

「そうね、あんまり遅くなると大変なことになるだろうし」

がジョッキを空けるのを待って、二人は居酒屋を後にした

ってお酒強いのね、いったいどれだけ飲んだの?」

「うーんと中ジョッキ7杯かな?たいしたことないわよ」

たいしたことあると思うんですがね、それで顔色一つ変えないんだからすごい

「あの3人の中じゃたぶん私が一番弱いわよ。あ〜でも彩希といい勝負かな?」

「朱莉はもっと強いの!?」

「彼女はザルよ。どんだけ飲ませても平然としてるわ。いっつもこっちが負けるのよね」

「二日酔いとかしない?」

「うーんさすがに明け方まで飲んでればちょっと頭痛はするけどね」

ビールをコップ3杯でほろ酔いになるとはすでに世界が違う

「外でこんなに飲んだのなんて久しぶりだわ」

「うらやましい会話ですね」

背後から突然かけられた声に振り返りながらは思わずの腕にしがみついたのだが

「お前はこっちだ」

と後ろからふわりと抱きしめられ、から引き離された

「尚隆!!」

は抱きしめる相手に驚きを隠せず声を上げのだが、はいたって落ち着いていて、目の前に立つ人物に

「朱衡、あんまりを驚かせないでよね」

少々、憮然としていた

「失礼、あまりにも楽しそうだったので声をかけるタイミングを逃してしまいましてね」

少しも悪びれない様子に溜息をつきながら呆然としているに視線をなげれば、相変わらず尚隆に抱き込まれたままで

、知ってたの?」

何を?とは聞かずともわかったので頷きながら

「知ってたわけじゃないけど、予想はついたから。店を出てからについてるはずの護衛の姿がなかったからね」

こんなことになるんだろうーなと簡単に予想できた、との返事には脱力した

「ずいぶん遅かったですね」

朱衡はの横に立ちながら、さりげなく彼女の腰に手を回す


尚隆といい朱衡さんといい人前で平然とこういうことができるあたり普通の日本人じゃないわよね


じたばたと尚隆の腕の中から逃れようともがきながらそんなことを考える

「女性同士の秘密の話があったのよ」

だから、深くは追求しないでね、と知りたそうな朱衡に先手を打って釘をさす

「おい!こいつはもらっていくぞ!」

尚隆はを抱えるようにしてさっさと朱衡達に背を向ける

「ちょっちょっと!!私はものじゃないんだからっっっ!!!」

の物悲しい叫びがビルの谷間に響き渡った

「ちょっと遅くなっただけなのに、会長も心配性ね」

「私も会長ほどではないですが心配しましたよ」

静かに、けれどどこか腹立たしさを滲ませた声音に、まずいっとが肩をすくめた

「時間を忘れるほど二人でなにを話していたんですか?」

こういう時の朱衡が実はかなり怒っているのだとは知っている。

そして下手な誤魔化しなんかすれば倍以上になって自分に返ってくることも体験済みだ。

「えーとですね」

後ずさりしながら視線を彷徨わせるをしっかりと捕獲して

「会長直々に明日、休暇を頂きましたから時間はたっぷりあります。うちでゆっくり説明して頂きましょうか」

「そっそれは、あなただけでしょう!!」

自分は本日、休みだったわけだから、明日は出社する予定になっていたはずだ

「二人一緒です」

なんで余計なことしてくれるかな!!あの会長は!!!

行きましょう、と手を差し伸べられた。それに素直に手を差し出せば強く握られ

それがなんだか嬉しく感じてしまったは、朱衡に肩を並べると

「ねえ、朱衡。私やっぱりあなたの手に堕ちて正解だったかも」

突拍子もない彼女の言葉に朱衡はとっさに反応できなかったが

「それは嬉しいですね。私もあなたを手に入れて正解だと思いますよ」

にしか見せない柔らかな笑みでそう返した






結局のところ、ここもバカップルなのである・・・・・









後書き

ようやく終わったぜい!!朱衡の腹黒さ、というか悪魔っぷりはご堪能頂けましたでしょうか?

こんなに長くなる予定はなかったのですが、ここまで読んで下さってありがとうございました。

最後のコレはいらないよーな気もしますが、始まりが始まりだったんでね。
ちなみに、文中のデフォルトネームは、朱莉が成笙ヒロインさんで、彩希が帷湍ヒロインさんです。

次回は是非とも尚隆さんとこ書きたいですね〜




  

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