あの人と出会って学んだことがある

あの人に

常識という二文字を

望んではいけない




大騒動の水曜日




ピンクウサギに拉致されかけた昨日

助けてくれるはずの副理事長は(いや、最初からあまり期待はしていなかったけれどね)面白がって見送ってくださったので

しかたなく、自力で脱出しました・・・・・

タイミングよく、あの格好をした彼に文句を言いに来た教授の集団と遭遇したので

ピンクウサギを押し付けるような形になってしまったけど

その後は当然、うちに帰りました

図書館の同僚たちには迷惑をかけてしまったけど

ごめん!許して!!私の身の危険なのよ

ということでなんとか納得してもらった(たぶん、全然納得してないだろうけど)

まだ、かなり早い時間だというのに

布団かぶって寝ました

眠りは現実逃避の一つの手段でもあり、誰でも簡単にできるものだ


けれど


それも長くは続かない


どれだけ望まなくても朝はやってくるもので

本気で大学辞めようと

決心した

あの人の近くにいることは出来ない

これ以上あの人に関わる前に全てを終わらせてしまおう

そう思っていたのに

電話線を引き抜いた固定電話ではなく

携帯電話が鳴った

そのナンバーが図書館だったのでなんの疑いもせずに出た私は

その向こうにいるのが図書館の仲間ではなく

あの人だと最初の声で気付いた

「今日こそは何がなんでも話を聞いてもらうぞ」

「申し訳ありませんが、私、本日付けをもって辞めさせていただきますので」

「本気か」

「勿論です。小松先生のTAは他のかたを捜されるように」

「・・・・・・です」

私は何も答えなかった

・・・・俺を本気で怒らせるなよ」

その低く感情を押し殺した声に私は息をのむ

「学校で待っている」

それだけ言って切れた電話

行かなければいいのに・・・あの人がどんなに怒ろうと私にはなんの関係もないのに

時間、ぎりぎりまで悩んで

結局、私は大学へ行くことにした

副理事長のお出迎えも3日目ともなるともはや感慨もなにもあったものではない

けれど、今日の副理事長は私を見て心底ホッとした顔をした

「今日、君がこなければアパートまで行こうかと思ったよ」

「副理事長、お話が」

「大学を辞めるという話なら聞かない」

「副理事長!!!」

「君に最初に話したはずだ、この大学の実情を」

ええ、聞きましたとも!職員の大半が契約社員になったことも知ってます

「君は彼の、小松尚隆という人物のことをどこまで知っている?」

「さあ、ほとんど知りませんわ」

自嘲気味に呟く、事実だから

私が知っているあの人は

あの3週間の間だけだから

「ならば、覚えておくといい、彼にとってこの大学を潰すことなど容易いことだということを」

「副理事長であるあなたを無視してですか?」

「この場合、小松尚隆という人物にとって重要なのは私ではない、君だ」

その言葉の強さに押し黙る

言葉をつむごうとした私は横から聞こえてきた黄色い歓声に口を閉じた

「小松先生〜〜〜!!」

「きゃあ〜〜!今日はそれなんですかぁ〜」

女子生徒の集団に囲まれた中にそれはいた


昨日と同じ、ピンクウサギ


ただし!!本日はそれだけじゃなく


グラサンに真っ赤なアロハシャツを装着してますが・・・・


「どうだ?似合うか?」

集団の中でそりゃあもう嬉しそうに(いや、着ぐるみだから表情は変わらないんだけど態度がね)ポーズをとる

腕に抱きついた生徒を引き剥がすでもなくそのままにさせている

しかも左右どっちとも

向こうはこちらには気付いていないようだった

「・・・・・副理事長、小松先生はじゅ〜ぶんすぎるほどこの大学を堪能していらっしゃるようにお見受けしますが」

「うん・・・まあ・・・そうとも言えるかな」

そうともどころか、確実にそうじゃないのよ!!ああ、もう!なんで私こんなことで怒ってんだろう

「では、私は帰ります」

「え?」

「図書館の方々に迷惑をかけてしまいますが、その辺はなんとかしてください。ねぇ、副理事長」

言外にそれぐらい出来るんだろうからやれ!!というのを含ませる

「もう一つ、小松先生にご伝言願えますか?」

副理事長を使いっ走りに使うなんて二度とないだろうな〜

「大学には来ましたから、と」

確かに大学には来たわよ、ただし職員駐車場だけど、間違っちゃいないわ

「では」

自分でも寒々しいなぁと思われる笑みを残して、私は大学を後にした

携帯の電源も切っておこう

ついでに、アパートに直行するのもやめておこう

実家には・・・・

平日のこんな時間に帰ったら何事かと心配させるから近寄れないわね

可能な限りうちに帰るのを遅らせなければ

確実にあの人に捕まる







いつも行くショッピングセンターをとりあえず逃げ場にして

私はひたすら時間が過ぎることを願った

ぼーっとして歩いていたために人にぶつかる

その拍子に相手の持っていた荷物が散らばった

「すいません!!ごめんなさい!!」

慌てて謝罪して荷物を拾う。あきらかに私がボーっとしていたのが原因だもの

「いいえ、こちらこそ。ごめんなさいね」

その人はえらく優雅で綺麗な人だった

「初めての場所なので、ちょっと迷ってしまって」

ゆっくりとしたその話し方に彼女が日本人でないことに気付く

集めた荷物な中に一つ、グラスがあって、それは見事に壊れていた

「本当に申し訳ありません。同じの買いますから」

慌ててそう申し出るものの

「気にしないでください」

「でも、本当に悪いのは私の方ですから!!」

壊してしまったのは私がぶつかったせいだし・・・高くなきゃいいんだけど・・・・

「ん〜それでは、一つお願いがあるのですが」

「はい?」

「これからお時間ありますか?」

私は素直に頷く、ええ、くさるほどありますとも!!

「では、ここを案内してもらえますか?」

「それぐらいなら、喜んで」

「ありがとうございます」

いやいや、礼はいりません。元はといえば私のせいなんだし

「実は友人があと2名いますが、一緒にいいですか?」

「はい、かまいませんよ」

彼女が手にしていた荷物を半分受け持ち、彼女の友人が待っている場所に向かう

いや、まあなんというかすごいね〜。それが第一印象だった

そこにいた2人は私がぶつかった彼女並みに綺麗な人達だった

う〜ん美人が3人もいるなんて目の保養だわ。周りの視線がやたらに突き刺さるんだけど

彼女達は私を見ると驚いたような顔をした

そりゃあそうだろう、自分の友人がいきなりまったく無関係の人間を連れてきたんだから

彼女達は日本語でない言葉、おそらく中国語かな?で話していたが、すぐにどこか楽しそうな表情を浮かべた

「よろしくお願いします」

「ありがとうございます」

と、言われてしまった

「いえ!こちらこそ、よろしくお願いします」

慌てて頭を下げる。ゆっくりとした喋りだが日本語は完璧だ

こうして、私はこの日、彼女達とそれはそれは楽しい時間をすごした

彼女たちは親友同士で、息抜きにここに来ているとのことだった

名を聞くと少し困った顔して、日本人には聞き取りにくいだろうからと

朱(しゅ)、星(せい)、彩(さい)という字を書いて、これで呼んで欲しいといわれた

このところ色々とありすぎて少々鬱になりそうだった気分も上昇し

私は久々に笑った気がした

別れ際に彼女たちは

「また、お会いできる日を楽しみにしています」

そう言ってくれた
そんな日がくるとは思えなかったが、そうなるといいな、と思ったので私も頷いた






その日、大学ではアロハシャツを着たピンクウサギがものすっごい不機嫌で授業をしたらしい

副理事長曰く、「自業自得だ」とのことだった









言い訳

うふふふふ〜ついに彼女達まで出してしまいました。パラレルの隠れてない隠し部屋をご存知の方は想像つくでしょうが、彼女達です。名前出さないようにするのに苦労したすえにあんなのになってしまいました。すいません。

どの辺が大騒動なのかと申しますと・・・たぶん、会社です。なにせ尚隆だけでなく彼女達まで会社抜け出してます。大事です!!残された連中はそりゃあもう大変でしょうとも!いいのか、上役がこんなんばっかで・・・・




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