人間覚悟を決めてしまえばあとは前に進むだけで

今までの憂鬱が嘘のように

気分も明るく軽くなる

例えその後にどんなことが待ち受けていようと

決定してしまえば楽なものだ




複雑怪奇な木曜日




この二週間で許容以上の働きをみせた私の脳もそろそろ限界にきているようだった

色々と悩んで考え、一睡もできずに出た結論は昨日と同じ

つまり「退職」の二文字だった

私が辞めることであの大学に甚大な被害を及ぼすようだけど

そこはあの腹黒陰険大魔王な副理事長になんとかしてもらおう

ああ見えても曲がりなりにも経営者なんだからそれぐらいの手腕は持ち合わせているだろう

しかも尚隆の部下だったらしいからどうにかできるんじゃないだろうか?

これ以上、逃げ場がなくなる前に逃げ切ってしまわなければ

両親は恐らく死ぬほど心配するだろうけど

このさい背に腹はかえられない、このアパートも引き払って実家に戻ろう

とりあえず、事情のほとんどを知っている祐に後を任せて、私自身は今日にでも戻ろう

高校生の弟に頼る姉っても情けないわね・・・・

そう考えてしまえば、私を引き止める絶対的な理由はなくなる

ならば行動は早いにこしたことはない

なにしろ敵はあの副理事長と尚隆だ

私がうだうだと悩んで躊躇している間に

外堀を埋めることぐらい朝飯前にやってしまうであろう人間達だ

私がいつも以上に気合をいれ部屋を出たのはいうまでもない




職員駐車場ではなく構内に車を入れさせてもらう

守衛さんに怪訝そうな顔をされたけど、職員なのでちゃんと通してもらえた

そのまま車を進めて、副理事長室のある建物の前に車を止める

一応、駐車場になってるところに、たぶん偉い人の車が止まる場所なんだろうけど

講義中なので人は少ないがそれでも学生や、職員がやたらと視線を投げてく

それらをすっぱり切り捨てて、一度大きく深呼吸して、私は副理事長室に向かった

戦いはこれから一瞬で終わらせてみせる、長引けば私に勝ち目がないことは明らかだから

静かにドアが開いたエレベーターを一歩出れば、そこは敵の手中

このワンフロア全部副理事長のために使われている

本人曰く、移動が面倒なので全部をここに集約させたらしい

そして、一度だけ足を踏み入れたことがある副理事長室のドアをノックした

聞き覚えのある秘書さんの声にゆっくりとドアを開ければ驚いた顔をされた

まあ、それが当然の反応だろう

「あの、ただ今。副理事長は会議で出かけていらっしゃいますが」

「ああ、結構です」

ホッとして全身から力が抜けた

だけど運がいいわ、本人目の前にして戦うのはキツイもの

「これをお渡し願いたいんですが」

表面上は何も書かれていない封筒を手渡す

辞表とでも書いたに日はこのお姉さんだって慌てて副理事長に連絡とることは目に見えてあきらかだ

「お急ぎなら連絡を取りますが」

「いいえ、全然急ぎじゃありませんから」

にっこりと作った笑顔をみせて、そそくさとその場を後にする

ここから先は時間との勝負だわ!

一階についたエレベーターから飛び出して、車に乗り込む、エンジンをかけながら出るかどうかわからないがとりあえず弟の携帯にかける

しばらくして慌てた様子の弟が出た

「ごめん!授業中じゃなかった?」

「いや、休み時間だったってなんかあったのか!姉ちゃん!」

「ううん、何もないんだけど、今、大学辞めてきたの」

「・・・本気」

「本気。それでね当分実家に厄介になろうと思うんだけど」

「いいじゃん!当分うちにいなよ、親父達も喜ぶって」

「それでね、アパートも引き払いたいの」

「姉ちゃん本当に本気なんだな」

「そうよ、だから荷物とかお願いしていいかな?」

「わかった、今日はこのままうちに戻るんだろう?」

「そうするつもり。ごめんね面倒かけて」

「何言ってんだよ、姉ちゃんたまには家族に甘えろっての」

「うん、ありがと」

「じゃ、ちゃんとうちに帰れよ?」

「うん大丈夫」

ちょっとだけ泣きそうになりながら電話を切った。弟はいつの間にか私より大人になったんじゃないかと思える

守衛さんにありがとうの意味も込めて少しだけ丁寧に頭を下げて、私は大学を後にした

バックミラーで建物を見ながら、もう二度と来ることはないだろうと、少しだけ感慨にふけった

そういえば、尚隆はまだあのピンクウサギで授業しているのかしら?

結構、バリエイションがあったみたいだから、今日はどんな格好しているのかしらね

尚隆のことを考えて笑える自分に驚きながらも

すぐに、たぶん心配するであろう母親にどう説明するかで頭を切り替えることにした









「いいか〜こっちの計算とここの計算が合わなきゃ倒れるからな」

どうやってあんなに器用に書けるんだろうかと生徒全員が疑問に思う中、尚隆は相変わらずのピンクウサギの着ぐるみ着用して、黒板に文字を羅列していく

ちなに本日のテーマは日本のサラリーマンだそうで・・・・スーツに革靴着用である

頭のお堅い年配の教授陣にまともな格好をしろ!!と意見されたのでまともな格好をしてみせたらしい

ただし、ウサギの着ぐるみが!だが・・・・

「う〜し、んじゃこの設計図上で一番重要な・・・」

「尚隆!!!!!」

突然、教壇の横にある扉が勢いよく開けられ、些か青ざめた表情の副理事長が飛び込んできた

「すまんがちょっとコレ借りるぞ!全員、解散!!」

いきなり飛びこんできてそう言い放つと、ピンクウサギの耳を引っつかんでズルズルと廊下に引きずり出した

「おい!!そこに痛覚はないが首に多大な影響を及ぼす!!」

「やかましい!彼女が辞表を出したぞ」

「・・・なんだと」

「さっき秘書から連絡をもらってとんぼ返りしてきた」

副理事長は封筒を尚隆に差し出した

「上にまっさらな封筒をかぶせてその下に辞表がはいってた。秘書がただならぬ気配だったので、と俺に連絡してきたんでわかったんだ」

さすがの秘書も副理事長に無断で封をしてある封筒を開ける度胸はなかったらしい

嫌な予感がした副理事長自身が会議を投げ出してとんぼ返りして封をあけたというわけだ

そして、その足で尚隆の授業に乱入してきたのだ

「どうするんだ」

辞表はたった一言だった<諸事情により辞めさせていただきます>どんな感情も読み取ることのできない一言

「俺を怒らせるなと言ったのに」

ぐしゃと辞表を握りつぶすと、それを副理事長に投げ渡した。静かに、だが確実に尚隆が怒っていることはあきらかだった

「尚隆、お前が何をしようとしているのか凡そ理解できるが」

「なら聞くな」

「一つ忠告しておく」

背を向けて歩き出そうとしたウサギの襟首を掴んで向きなおさせると

「お前のいつもの強引さで進めば、確実に彼女はお前から逃げるぞ」

「逃がすと思うか?」

「確かに、彼女の身体は手に入るかもしれんが、心は無理だぞ」

その一言に尚隆の動きが止まった

「お前が欲しいのは彼女の何だ?」

「決まっているだろう」

尚隆はフンというように頭を上げて

「心と身体その両方だ」

くるりと背を向けて恐ろしい速さで廊下を進みながら

「社に戻る。車を回せ」

「かしこまりました」

いつの間にか背後についていたSPにそう指示した

、俺が二度もお前を手離すと思うなよ」









言い訳

あきらかにコメディじゃなくなってる気がします

唯一の救いはいまだにピンクウサギの着ぐるみを着てるってとこでしょうか

うふっふっふ〜怒りまくった尚隆さん次回どうなるんでしょうか?ってヒロインさん逃げられるんだろうか?(お前が聞くなっつーの!!)




 

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