一生口にしないつもりだった
それを言ってしまえば
なんだか負けを認めてしまったような
情けない気持ちになるから
でも本当は誰かに聞いてほしかった
でもね、それはあなたじゃなくてよかったのよ?
むしろあなたじゃないほうがよかったわ・・・・
大迷惑の金曜日
信じられない月曜日からようやく金曜日へと日にちは移り変わり、の気分は少しばかり上昇していた(ホントに少しだけれども)
当然(?)のごとく大学は週休二日制
今日をなんとか乗り切れば、明日からに連休が待っている
その間に何とか気力を補充して、来週を何事もなかったように過ごそう!!
そう固く決心しては黙々とこのところ邪魔が入りまくったせいで遅々として進まなかった仕事を片付けていた
「おう!。お前今日暇か?」
「暇じゃありません」
上司の一言に即答である
「あー非常に忙しそうなところ申し訳ないんだが・・・」
「そう思うなら邪魔しないで下さい」
もはや上司を上司と思っていない扱いである
「それがな〜」
「今度は何なんですか?」
「今夜、職員の合同新人歓迎会やるんだよ」
「そういえば、そんなこと言ってましたね」
ずでに春からかなり時はたって初夏に入ろうかという時期ではあるが、春先から5月中旬までの大学は行事が立て込んで忙しすぎ、新人歓迎会どころではない。そのためこんな妙な時期に歓迎会がずれ込むのである
「お前行ってこい」
「はあ?」
突拍子もない上司の要求には間の抜けた声をあげた
「いや〜実は内密なんだが副理事長がちょっと顔出すことになっててな、もしお前が来るようなら宴会費用すべて向こうが持つと言ってるんだ」
あんのたぬきジジイ!!!!直接的な手段がダメだと知って間接的手段に乗り換えたな
「ですが、私の勤務は本日8時までですので」
やんわりと断ろうとしたが
「それなんだがな・・・・本日、図書館はシステム保守で6時で閉館するんだ・・・・」
あまりに急なことに唖然としただったが
「なっ!何考えてんですかっっ!!!」
「俺に怒るな!!しょーがないだろう。システム保守はどうせ近々やらなきゃいけないことだったんだし」
「それにしたって!なんだって今日なんですか!!」
事前通達もなにもあったもんじゃない。普通はありえないことだ
そこまで言ってはハタっと気付いた
「もしかして・・・・」
「たぶんだが・・・管理部のほうから今日がいいと言ってきたのは恐らく・・・」
たぶんでも恐らくでもなく確実に!あの副理事長が裏で糸を引いているに違いない
「ふっざけてんじゃないわよっっ!!腹黒大魔王っっ!!」
の心の底からの叫びに上司は同情の眼差しをむけながら耳を押さえた
・・・・本日の歓迎会、出席確定である
ホントにすぐにこの場に来て正解だったな・・・・
尚隆は異様に盛り上がった宴席をさっと見回し、目の前にいる彼女に視線を向け、心の底からそう思った
「どーして・・・あなたが・・・ここにいるの?」
「おい!ったくもう酔ったのか?」
トロンとした目つきと上気した頬、はっきり言って尚隆の理性は我慢の限界に近かった
クタっと力の抜けた身はすっぽりと尚隆の腕の中におさまり、いつものあの強固なまでに自分を避ける人物と同一人物なのかあやしいぐらいだ
「ゆめ・・・ね、だって、あなたがいるわけ・・・ないもの」
「おーい、さーん。しっかりしろよ」
周りの目が非常に痛い・・・・何せ二人の関係はどういったものなのか、いまいちはかりかねるものがあったからだ
「こいつ連れて帰ってもOKっすかね?」
一応、承諾をとってみる。と言ってもすでに連れて帰る気で片膝ついた状態では承諾もなにもあったもんじゃないだろーが
どーぞ、どーぞ、と諸手を上げて送り出されると少々後ろめたい気がしなくもないが、この状態のを他の人間に見せることに比べればなんてことなかった
彼女の荷物を受け取り、いぜん腕の中で大人しくしている彼女を抱え上げる
周りから歓声と悲鳴が上がった
「こいつの靴どれかわかります?」
一番手近にいた女性に聞けば、彼女は慌てて部屋の外に走っていった。その後を追うべく、いまだ注目している人々に軽く頭を下げると、尚隆は腕の中のを落とさないよう慎重に部屋を後にした
「あの、これです」
先に部屋を出ていた女性がの靴を差し出す。それを指先で器用に受け取りながら礼を言う
「タクシー呼びましょうか?」
「いや、車あるからいーわ」
心配げなその女性にそう言って表に出る。そこには黒塗りの高級車
「わりぃけどドア開けてもらえない?」
その声に呆然としていた女性もハッと我に返り、慌てて後部座席のドアを開けた。そこに慣れた仕草でをそっと降ろす
「じゃあ悪いけど後、頼むね」
にっこりと笑顔つきでそう頼むとすぐさまドアを閉め、運転手に行き先を告げる
「よろしいのですか?」
訝しげな声に
「だってよ〜ここで俺がこいつのアパートにでも連れて帰ってみろ、明日叩き出されることは間違いないぞ」
部屋に連れ帰っても同じことじゃないでしょーか?という疑問は深い溜息にとって換わられた
車は静かに滑るようにその場を後にし、夜の闇の中に姿を消した
余談だが、宴会会場に戻った女性から車の話を聞いた一部の女性陣がすごい勢いで外に飛び出し、遠ざかる車を見送ったそーだ
「いったいどれだけ飲んだんだ?」
自分の記憶の中にいる彼女はここまで酔うことはなかったはずだ・・・・・
隣でぐったりとしているの額にかかった髪をそっとどけてやりながら小さく呟く
すると閉じていた瞼がゆっくりと開き、が焦点のあっていないような瞳で尚隆を見つめた、完全に目が覚めているわけではないようだ
「どう・・・して・・・?ここに、いる・・・の?」
「?」
「ゆめ・・・ならさめ・・・て・・・・あなたに会ったら・・・・いけない・・・って」
その言葉に尚隆は全身の血が一気に引く思いがした
「、それは誰が言った」
彼女をやんわりと抱きしめて、耳元で囁くように問いかける
酔った人間は本音が出るというが彼女もそうだろう、ならば彼女の口からあの時のことを聞き出すチャンスでもある
「あの・・・人よ。あなたを・・・迎えに・・・・きた」
「あいつか」
尚隆は奥歯をきつく噛み締めた。わかっていたこととはいえ実際、彼女の口から聞くと怒りが込み上げてくる。
あの男のせいで俺達は別れなければならなかった・・・・・
「あの人が言ったの・・・・・・あなたとはもう会えないって・・・・忘れて下さいって」
「・・・」
「住む世界が違うから・・・・あなたの・・・迷惑になるから」
「、もういい」
それ以上、尚隆が聞いていられなくなった
「だから・・・忘れようとしたのに・・・・どうして、夢にまで出て・・・くる・・・・の・・・」
最後は寝息に変わり、がすっかり眠ってしまっても尚隆は飽きずにの寝顔を見つめていた
「会長」
どこか控えめな運転手の声にハッとした尚隆は
「亦信」
「はい」
運転手にそれまでとは違う冷めた固い声で
「社に戻ったら成笙に持てる全ての力を使ってあいつを探し出せと、伝えろ」
「すでにICPOには依頼しておりますが」
「やつらより先に見つけ出せ。最優先事項だ」
「了解致しました」
尚隆は再び己の腕の中で静かに眠るに視線を落とした
「こんなことでお前が許してくれるとは思わないが」
それでも何もせずにいるよりかは尚隆の精神衛生上いくらからマシだった
「会長、着きました」
静かなその声に尚隆はドアを開け、再び大事そうにを抱きかかえた。相変わらずは深い眠りの世界にいるようで、起きる気配はまったくない
「亦信、悪いがこいつの荷物と靴持ってきてくれるか」
「かしこまりました」
後ろからついてくる亦信を確認して尚隆は部屋に向かった
腕の中のが目覚めていれば、きっと無駄に広い部屋だと言ったことだろう
部屋に入ると入り口で亦信が
「会長、私はこれで失礼いたします」
「ああ、すまなかったな急に使って。例の件、必ず成笙に伝えろ」
亦信のことだから忘れるなんてことはないだろうが、一応念押ししておく
「かしこまりました」
最後に深く一礼して亦信は戻っていった
尚隆は開けっ放しになっていた寝室のドアにラッキーとばかりにを寝室に運び、静かにベッドに寝かせた
2年ぶりにじっくりと見ることの出来たの寝顔に、尚隆の顔は自然とほころぶ。起こさないように注意しながら手触りのよいその髪を何度も梳く
「なあ、。俺はいつまで待てばいい?いつになったらお前は俺のもとに戻ってくれる?」
彼女に近づけば近づくほど、彼女は離れていく。近づいたのと同じスピードと距離で彼女は離れていく・・・・結局、二人の距離は近づかないまま
2年前のあの日、ムリにでもを自分の手元に置いておけばこんなことにはならなかったはず
それは自分のミスだ
そして、あの時、あの男に全てを任せなければ、彼女がこんなに苦しむことも自分がこれほど悩むこともなかっただろう
これも自分が招いたミスに違いない
「情けねーな・・・・」
自嘲気味にそう呟き、名残惜しげにの額にそっとキスを落とすと、静かに寝室を後にした
今夜は眠れそうにない、なにしろもっとも欲しいと願った存在が自分の寝室でやすらかな寝息をたてているのだ理性と欲望の葛藤である
これ以上、に嫌われないためにも理性の箍がはずれないようにせねばならない
「やれやれ、長い夜になりそうだ」
とりあえず、己の理性をさらに強固にするために尚隆は書斎にこもり、溜まった書類を片付けることにしたが、それが進むかどうかは甚だ疑わしい・・・・
2人にとって色々な深い意味を持つ夜になったことは確かだ、もっとも1人は完全に酔いつぶれていたのだが
明日は土曜日。週休二日制の大学は休みである・・・・
言い訳
ぶっちゃけラブコメなこと忘れてます・・・段々シリアス風(あくまで風で)になってきたのは気のせいでしょうか?
え〜尚隆さんが歓迎会にいらっしゃったのは副理事長から連絡もらったからで、その副理事長は宴席にはいらっしゃってませんでしたがアルコールを受付けない体質の総務主任に逐一ヒロインさんのことを報告させていたので彼女が酔っ払ったのを知っていらっしゃったわけです・・・こーゆー男です副理事長って奴は・・・・
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