今までのさして長くもなければ短くもない人生においてワースト3に入るぐらいの失態だわ
再びこの男の腕の中で目覚めるなんて・・・・
間違いだらけの土曜日
あまりの眩しさに軽く頭痛のする頭を押さえながら目を開ければ
すがすがしいまでの朝日と見慣れない白い天井が視界に入った
痛む頭をどうにか稼動させて自分の現状を理解しようとした
えーと確かあの腹黒陰険大魔王でもある副理事長の姑息な手段によって大学職員の飲み会に強制出席させられて
そこで周りのあきらかに私と小松尚隆の関係を知りたがるぶしつけな質問と好奇の視線に耐え切れずいつも以上にアルコールを口にして
いい感じに酔っ払ってしまって・・・・・それからどうしたっけ?
なんか夢の中であの男に抱きかかえられて、言っていけないことを思わず口にしてしまったよーな
そこまで頭の中を整理して間抜けなことに私はようやく自分がどこにるのかを知る
「ん〜なんだ。もう起きたのか?今日は休みだからもう少し寝ていろ・・・・」
音速に近いんじゃないかと思うぐらいの素早さで首を横にすれば
そこにはあの男が半分寝たままのような顔でいて
しかも片腕はしっかり私の腰を抱いていた(その状況にそれまで気づかなかった私も相当の馬鹿だ)
私の頭の中は真っ白・・・活動再開までそれなりの時間を有した
「手も出さずに一晩腕に抱いて眠るだけで我慢した救い主に対してやることがこれか?」
目の前で見事なまでに赤くなった頬を押さえてぐちぐちと文句を垂れている人間に対し、私はひたすら沈黙を守った
それ以前に、平手打ちをくらわせてベッドから叩き出し、寝室に立てこもるということをやったのだが・・・・
どう動いていいものか真剣悩んで寝室に立てこもる私に、気持ちを落ち着かせるためにも茶でも飲もうと言い出したのはあの人で
見た目にもお高いだろーなーという立派なカップにどこをどう捜しても使っているあとが見られない台所でお湯を沸かし紅茶を淹れたのは私
淹れたての紅茶は大変美味しく、香りも素晴らしいもので、たぶん葉も水も私なんかじゃとてもじゃないが手もでないようないいもの使っているんだろうな〜などと変なことに意識が向く
確かに酔っ払ってしまった私をあの集団の中から救い出してくれたことには感謝しよう
そこはかとなく裏であの副理事長が糸引いているように思えなくもないんだけど、それも今回だけは目をつぶるとしよう
だけどね、一晩手を出さずに我慢していたですって?あったりまえのこと言ってるんじゃないわよ!!
どーして私とあなたが抱き合って(正しくは私を抱きこんで)寝てなきゃいけなかったの!あなたと私が一緒に寝てるというその時点でじゅーぶんすぎるほど間違ってるのよ!!
無意識に目の前にいる人間から逃げようとしている
ああ、もう!なんでこんなことになったんだろう
もう二度とこの人に関わるまいと決めたのに、この人の射程範囲内に絶対近寄るまいとしてたのに
目が覚めたら射程範囲内どころか手の届くところにいたっていうんだから笑えないわよ
しかも今現在お互い向かい合って茶を啜りあっているんだから
本気で笑えないわよ
「」
「えっ、あっ、なに?」
呼ばれて思わず顔を上げれば、どこか嬉しそうな顔をしたあの人とばっちり視線が合う
「ふ〜ん名前で呼んでも返事するんだな?」
しまった!言われてハッとする。今まで気を張ってこの人に対峙してきたのに、ここに来て緊張の糸が切れた
この場所がいけない・・・・なにしろこの人のマンションなんだもん、相手の手の中よ
ゆっくりと紅茶を口にして気持ちを落ち着ける。ここで負けるわけにはいかない
「ごちそうさまでした。私はもう失礼するわね」
震えそうになる手をなんとか押しとどめて何事もなかったかのように言葉を紡ぐ
「どういたしまして。送って行こう」
「結構よ」
これ以上、この人の側にいたくはない。なけなしの気力を振り絞ってそう答える
「そんなヨレヨレの格好で何いってんだ。ついでに駅まで片道1時間ってところだぞ、ここは」
こんな格好しているのはしょうがないじゃない。はっきり言って私に昨夜の記憶はないんだし
「タクシーでも捕まえるわよ」
勢いよく立ち上がると、視界の隅にたえず捉えていたバックを手にする。そのまま振り返りもせずに外に出る・・・・・はずだったんだけど
「人の好意をたまには素直に受け入れたらどうだ?」
バックを手にしたまではよかったんだけど、次の瞬間、強く腕を(正確には肘を)引かれてよろめいた
結果として私は再びこの男の腕の中
「あなた以外の人間の好意ならずいぶんと素直に受け入れられるんだけどね」
声が震えないように注意しながら言葉を発する
お願いだから今すぐその手を離して!私が勘違いしてしまう前に
必死になって勇気をかき集め、その腕を振り解く。ヨロヨロと後ろに下がってようやく正面からあの人の顔を見上げることが出来た
何か言わなければと思うのに言葉は一向に出てきてくれない
ただ、お互い沈黙するだけ
重苦しいまでの沈黙を破ったのは押し殺したようなあの人の一言
「・・・・送っていく」
私の隣をすり抜けていくあの人の背中を見つめた
「ありがとう」
私の口から出たのはその一言だけ、後はただ静かにあの人の後ろを付いていくだけだった
「どうした?乗らないのか?」
ドアにすら手をかけるのをためらっている私
初日に学校の駐車場で見た高級車。嫌味でもなくこういうのが似合うというか自然なんだから住む世界の違いを見せつけられる
軽く深呼吸をくりかえして乗り込む
「お邪魔します」
部屋にいるときよりも確実に二人の距離は近い。身の危険性からいえば部屋のほうが格段に上なんだけど(いや、どっちもかなり危険なことに違いはないんだけどね)・・・・・緊張感は絶対、今のほうが上だわね
何か口にすれば余計なことまで言ってしまいそうで、ただひたすら沈黙を守る私
そんな私にどう声をかければいいのか分からないんだろう、あの人も結局黙ったまま
自分が沈黙に耐えられる性格しててありがたいとこのときほど思ったことはない
意識的にあの人から遠ざかるために視線はつねに窓の外、そしてふと気づく
自分が行き先を告げていないという事実に
けれど車は確実に私のアパートに向かっていて、それはつまりこの人は私の住所を確認済みということで、しかもこの迷いのなさからしてこの人のマンションからうちまでのルートもすでに確認済みもしくは行き来したことがあるということだろう
今更驚きはしないが・・・・凹みはする。結局、地球上にいる限りこの人から逃げることはムリなんだろうか?
アパートの前に滑るように静かに車は止まる
ホンッとこの場に似合わない車だわね
「どうもありがとうございます」
そそくさと降りると、あっという間にあの人が回ってきて腕をとられる
お願いだからこれ以上、関わらないで欲しい。私がちっぽけなプライドを保って平静でいられるうちに
その腕を外すでもなく、離すでもなく私たちは固まったまま
「なにやってんだよっ!!!」
聞きなれた怒鳴り声に私の意識は現実に引き戻される。掴まれた腕を振りほどくと同時に私とあの人の間に飛び込んできた人物が一人
「祐!!」
思いがけない弟の出現は私に驚きと安堵をもたらした
「嫌な予感がしたんで来てみれば、何やってんだよっっ!!」
何やってると言われても・・・・どう答えろというのだか
「お前・・・確かの弟の・・・祐だったか?」
「あんたに名前を呼ばれるいわれなんかない!!」
まったくもってその通りではある。祐は彼を睨みつけると私の腕をつかむと引きずるようにして部屋に向かった
その勢いにのまれるまま私はあの人に背を向けた
「引越したんだな」
呟くようにひっそりと後ろからかけられたその言葉に私の中の何かが切れた
祐の手を振りほどいて、あの人に向き直り正面から叫んでしまった
「あなたがそうさせたくせに!!!!」
冷静でいるはずだった、冷静でいたかったのに・・・・
最後の一言でそれは砂のように崩れ去っていった
そうよ
あなたが
そうさせたんじゃないの・・・・・
言い訳
今回ヒロインさん何度腕をつかまれ何度振り解いていることやら・・・・
尚隆さんやっぱ抑制が効かんかったみたいです。しっかりちゃっかりヒロインさん抱きこんで寝てます。
書斎で書類を片付けるんじゃなかったのか?まあ、予想通りといえばそうなんだろうけど
でも手を出さずにいたことはとりあえず褒められる・・・かな?
よーやく出てきてくれた弟くん!君がいなきゃ話が停滞してしまうんだ
うーん波乱の一週間ですが・・・ごめん、もう一週間続くかもしれないです。
だって日曜日だけじゃ事態の収拾がつきそうにないんだもん
おおう!またタイトル考えなきゃいかんじゃないか!!(苦手なのに〜)
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